ピンホール・カメラの技法をもちい、対象と撮影者の関係や、知覚のありかたをゆさぶるような写真作品を制作する佐野陽一の個展を開催します。
作家コメント
Water of light.
それは水のように捕らえどころのないもの。
手に掬ったと思っても、すぐ指の間から零れ落ちる。
山の中を歩き廻っていると突然、目が留まるものに出会った。
一枚の葉が背後からの陽光を受け、輝く光の塊になる。
今見ているものは、葉なのかそれとも光そのものなのか。
姿勢をほんの少し変える。
その途端、輝きは跡形もなく消えた。
Light is not seen.
光だけを見ることは出来ない。
佐野陽一
視知覚の未来形
佐野の作品を見ればすぐにそこに「何か」を気づく、しかし「何であるか」を認められない。
色のモザイクを前にありのままに見ようとする気持ちとは裏腹に、焦点を合わせようとしている目の動きに、焦点を合わせそこに「何であるか」を認めようとしている目の動きに気づく。目は提示された情報に飽き足らずさらに欲している。焦点を合わせればそれが得られる可能性を知っている。
画面の中の色のモザイクに「何か」を気づく、そこを見つめる。するとその「何か」が、「何であるか」を認めるための最初のステップである背景との分離が始まり浮き上がってくる。それにつれて手前と奥という関係も見え始め奥行きを感じ始める。
けれど、写っている以上に縁もディテールも明確になることのない作品を前に、まるで諦めたかのように分離は中断され、「何か」は色のモザイクの中に沈んで行き、感じ始めた奥行きはそっと失われ平面に戻る。作品を眺めているあいだ、この見えの変化は緩やかに繰り返される。満たされない情報を前に処理に戸惑うように。
作品を前にして、色のモザイクである平面の知覚と、「何か」とその配置と前後関係の知覚=ある光景の(しかしここでは可能性に留まる)知覚が交互に起こる。これは通常の写真では起こらない、平面(つまりこれは写真である)と光景(かつてあった何か)の知覚は同時に済んでしまう。
未満に留めた情報が、写真を見るという行為の中にある2つのプロセスを改めて意識させてくれる。このことももちろん面白いのだけれど、むしろ佐野の作品が「何であるか」を認めるための運動を引き起こすことが興味深い。
佐野の作品は「何か」には気づけるだけの情報を持っている。網膜上に収斂しつつある光束の配列、「何であるか」を認めるための情報をまだその小さな拡散のなかに秘めている色を帯びた光のモザイク。そうした知覚する少し前の網膜像に似ているのかもしれない。
感じるのは「かつて」ではない。
南條敏之(写真家)
佐野陽一 (さの・よういち) 略歴
| 1970 |
東京都生まれ |
| 1994 |
東京造形大学造形学部デザイン学科卒業 |
| 1996 |
東京造形大学造形学部研究生修了 |
| 2002- |
東京藝術大学美術学部先端芸術表現科非常勤講師 |
| 2004-05 |
文化庁新進芸術家国内研修員 |
個展
| 1996 |
「風景と思考」横浜日仏学院(神奈川) |
| |
「写真と構築」東京日仏学院(東京) |
| 1998 |
「透明な写真/transparency」アユミギャラリー(東京) |
| 1999 |
ギャラリー檜(東京) |
| 2001 |
「transparency-light, quantity」アユミギャラリー(東京) |
| 2002 |
「transparency-flow」Space Kobo & Tomo(東京) |
| 2003 |
「transparency-reservoir」Space Kobo & Tomo(東京) |
| 2005 |
「transparency」ツァイト・フォト・サロン(東京) |
| 2007 |
「vessel」switch point(東京) |
主なグループ展
1996
|
「Photography/Painting-佐野陽一+配島伸彦」ギャラリーサージ(東京) |
| |
「佐野陽一+森本太郎」アユミギャラリー(東京) |
| 1997 |
「版による」ギャラリー檜(東京) |
| |
「絶対風景の復活」Gallery工房親(東京) |
| 1999 |
「岩崎容子+佐野陽一+森本太郎」ギャラリー檜(東京) |
|
「アーティストの周縁/Artist's proof」トキアートスペース(東京) |
| 2002 |
「光・記憶・記録」Gallery工房親(東京) |
| 2004 |
「VOCA展2004」上野の森美術館(東京) |
| |
「STILL TIME/静時画」Gallery工房“親”(東京) |
| 2005 |
「REALITY CHECK」東京造形大学附属横山記念マンズー美術館(東京) |
| |
「SIPA2005」 Hangaram Art Museum of Seoul Arts Center (ソウル、韓国) |
| 2006 |
「新収蔵品展1」平塚市美術館(神奈川) |
| |
「私的風景・写真語り」Gallery工房“親”(東京) |
| |
「岡村多佳夫企画10周年記念展」アユミギャラリー(東京) |
| |
「写真の蓋然性」桑沢デザイン研究所(東京) |
| 2007 |
「subtle green-日常の微意識-」IIDギャラリー(東京) |
| |
「《写真》見えるもの/見えないもの」東京藝術大学大学美術館陳列館(東京) |
| |
「Japan Caught by Camera: Works from the Photographic Art in Japan」上海美術館(中国) |
switch pointでの過去の展覧会
2007 個展 
2009 個展 
|