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今回展示する4人は東京造形大学の絵画科の同級生です。
僕らが大学3年生の時、1994年の秋にこのメンバーで「FOURTH」という展覧会を行い、
15年後の今、縁あって同じメンバーでふたたび展覧会を持つこととなりました。
それぞれの領域で、それぞれの表現を獲得しつつある4人の現在位置を感じとってもらえたなら幸いです。
蓜島伸彦
造形大ポストモダンの系譜
「希望の技法」に出品している榎本裕一、蓜島伸彦、福田文彦、吉尾幸一郎の四人は、東京造形大学の絵画科で同級であった。彼らは、学生時代にグループ展を行っている。1994年10月27日から11月1日まで、八王子のアートスペースKEIHOで開催された「FOURTH」である。この「FOURTH」から15年後の2009年(しかも同じ10月)に、まったく同じメンバーで行われるのが「希望の技法」である。
当時、彼らは学生であり、「FOURTH」も自主的に行われたグループ展であって、そうした展覧会の多くがそうであるように話題になったわけではないだろう。しかし、15年というのは決して短い期間ではない。このような長い時期を経過したあとで、改めて同じメンバーによる展覧会が開催されることには、それぞれのメンバーにとって大きな意義があるだろうし、そこにひとつの文脈を読み取ることも可能である。
わたしが興味深く思うのは、「FOURTH」に参加したメンバーの世代が担った役割である。その後の造形大の絵画科から誕生した作家たちの作品から考えてみると、彼らの世代が存在したことの意味は大きかったであろう。というのも彼らは、造形大の絵画科における変化の端緒に位置しているからである。
1990年代の前半において、現代美術系の絵画の主流のひとつは、抽象表現主義の流れを汲むフォーマリスティックな抽象絵画であった。造形大の絵画科にもその影響は広がっていて、モダニズム系の抽象絵画を制作する学生が多かった。ここには、母袋俊也や赤塚祐二が講師としていたことの影響が強かったようである。
そうした傾向に変化が現れるのがちょうど「FOURTH」の世代あたりからである。彼らは、従来のモダニスティックな絵画から、より自由な作風へと移行した。作品の幅も広がっていて、映像やインスタレーションを制作する学生が増えていた。たとえば、当時の吉尾は映像作品をつくっており、絵画科の講評にも映像を出していた。また福田は、ダンボールでつくった箱にドローイングや写真をコラージュしたインスタレーション的な作品を制作していた。
こうした作風の自由さは、それまでのモダニズムのスタイルに対するポストモダンの現象であったと考えることができる。つまり彼らは、造形大の絵画科においてポストモダンの傾向を担った最初の世代なのである。実際、90年代前半は、村上隆や中村政人らによるポストモダン系の美術が台頭した時期に当たっている。当時、榎本や蓜島は、スカイ・ザ・バスハウスでアルバイトをしており、とくに蓜島は中村政人の展示の手伝いをしていた。彼らは、ポストモダンの風潮を身近に感じていたはずである。
しかし、ここが重要だと思う点なのだが、彼らはポストモダンの流行に安易に飛びついていない。時代の雰囲気を十分に吸収しつつも、流行に追随するのではなく、自分のスタイルを掘り下げる方向に向かったのである。ここに、造形大の絵画科に独自な傾向が誕生したといえるであろう。
一概にいえないところもあるが、造形大の絵画科の特徴として指摘できるのは、センスのよさとクールさである。センスのよさとは、作品の造形的な側面を軽視しないことでもある。彼らは、感情や感覚をストレートに表出するというよりも、反省的に作品のスタイルに構築していった。またこのとき、過剰な表現に向かうのではなく、余分なものをそぎ落とす方向に進んだ。そうすることで自分の問題意識を先鋭化していったわけだが、ある種のクールな印象もここに由来するであろう。
とくに蓜島や榎本の作品には、絵画であることを本質的なところから検証しようという態度が認められる。おそらくここには、モダニズムの美術から学んだ部分が含まれている。彼らは、過去の歴史の遺産を受け継ぎつつ、ポストモダン的な自由さのなかで独自なスタイルを形成していった。
一方、彼らの世代に特有の変化は、単に造形大絵画科内部の問題ではなく、90年代の日本における絵画の問題にも深く接触している。日本の現代絵画は、ちょうど90年代半ば頃から従来のモダニズム絵画とは異なる新たな展開を示すようになるからである。彼らは、そうした変化が兆した時代に発表をはじめた世代であり、また時代の変化を造形大の絵画科のなかで体現した最初の世代といえよう。
彼らの世代に特徴的な傾向は、すぐあとに続く作家たちに認められるし、さらにいえばある部分において近年の作家にも受け継がれているだろう。ここに、造形大学の絵画におけるひとつの系譜を認めることが可能である。実際、彼らの前の世代で卒業後も制作活動を続けた作家は、まったく皆無ではないにしてもきわめて少なかった。継続的に制作活動を行う作家が急増するのは、彼らの世代以降である。つまり彼らの世代は、ひとつの変化の時代、ひとつのはじまりの時代を象徴している。
とはいっても、こうした系譜がいままではっきりと見えていたわけではないだろう。蓜島は、早くから積極的に発表を行って、あとに続く世代に影響を及ぼしたが、榎本は、造形大卒業後もいくつかも大学で学んで技術的な修練を積んでおり、本格的な発表活動をはじめるのはこの数年のことである。福田は、卒業後も継続的に個展を行っていたが、ここしばらくは制作から離れていたし、吉尾は、広告ディレクターとしての道に進み、その方面で才能を発揮している。
むしろ彼らの世代の評価が定まるのはこれからであろう。この点においても、15年ぶりにかつてと同じメンバーが集まって展覧会をすることには意味がある。展覧会がいま行われることによって改めて見えてくるものもあるだろうし、また新たに生まれてくるものもあるはずだ。このとき「希望の技法」は、15年前と今日を結ぶと同時に、今後の現代美術に対する提言となるだろう。
西村智弘(美術評論家)
榎本裕一 略歴
| 1974 |
東京生まれ |
| 1996 |
東京造形大学美術学科Ⅰ類卒業 |
| 1998 |
女子美術大学大学院 美術研究科美術専攻 洋画研究領域修了
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| 2002 |
東京藝術大学大学院 美術研究科工芸講座 木工芸研究生修了 |
| 2005 |
石川県挽物轆轤技術研修所 基礎コース修了 |
| 2006 |
金沢美術工芸大学大学院 特別科目等履修生修了 |
個展
2005
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「flower」
東京国際フォーラムアートショップ内エキジビションスペース(東京) |
2006
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「風景」studio J(大阪) |
2007
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「塗膜の花 flower of paint skin」GALLERY千空間(東京) |
2009
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「R2286 White」
a piece of space APS & Gallery Camellia(東京) |
主なグループ展
| 1997 |
「「〜。」展」P-HOUSE(東京) |
| 1999 |
「女子美術大学の現代作家」セシオン杉並展示室(東京) |
2004
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「4空間」GALLERY千空間(東京) |
2007
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「盆景−My favorite garden 」 a piece of space APS(東京) |
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「ケレン −主張する色彩−」
東京藝術大学大学美術館陳列館(東京) |
蓜島伸彦 略歴
| 1970 |
東京生まれ |
| 1996 |
東京造形大学美術学科Ⅰ類卒業 |
| 1997 |
東京造形大学美術学科Ⅰ類研究生修了(版表現研究室)
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2002〜
2003 |
文化庁芸術インターンシップ国内研修員
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主な個展
| 2003 |
ギャラリエ アンドウ(東京) |
| 2005 |
「NEVER AGAIN」 ON GALLERY(大阪) |
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「windowpane - 窓硝子 new works 2005」
ギャルリー東京ユマニテ(東京) |
| 2008 |
「deep river」 ギャルリー東京ユマニテ(東京) |
| 2009 |
「MATRIX 1988-2008」 アユミギャラリー(東京) |
主なグループ展
2001
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「収蔵品展 009 紙の上の仕事 」
東京オペラシティアートギャラリー(東京) |
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「新世紀を開く美」 高島屋美術画廊(東京、横浜、大阪、京都) |
2002
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「eleven &eleven」コリア ジャパン コンテンポラリーアート 2002」
省谷美術館(ソウル) |
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「MOTアニュアル 2002 Fiction? 絵画がひらく世界」
東京都現代美術館(東京) |
2004
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「版画の記憶/現在/未来」東京藝術大学美術館 陳列館(東京) |
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「東京絵画 Tokyo Kaiga/Tokyo Painting」
文房堂ギャラリー(東京) |
2006
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「アートの箱庭 - 昭和庁舎でみる現代美術」
群馬県立近代美術館(群馬) |
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「With You, With Art アートとともに 」 府中市美術館(東京) |
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「Imaginary Truth 」
東京造形大学付属横山記念マンズー美術館(東京) |
福田文彦 略歴
| 1973 |
東京生まれ |
| 1996 |
東京造形大学美術学科Ⅰ類卒業 |
個展
| 1997 |
ギャラリー山口(東京) |
| 1998 |
ギャラリー山口(東京) |
2001
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「first fantasy」ギャラリーQ(東京) |
| 2003 |
「わくわくガールズ」ギャラリーQ(東京) |
| 2006 |
「FUKU YOU」swtich point(東京) |
グループ展
| 1995 |
「BAD NICE」 東京都美術館第2彫塑室(東京) |
| 1996 |
「おうちプロジェクトシール版」 モルフェ’96(東京) |
2006
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「geisai#10」参加 |
吉尾幸一郎 略歴
| 1973 |
青森県生まれ |
| 1996 |
東京造形大学美術学科Ⅰ類卒業 |
グループ展
| 1994 |
「四人展」 アートスペースKEIHO(東京) |
| 1995 |
「七人展」 アートスペースKEIHO(東京) |
1997
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「新進の作家たち」 アユミギャラリー(東京) |
開催情報
「希望の技法 -The Art of Hope -」
榎本裕一
配島伸彦
福田文彦
吉尾幸一郎
2009年10月8日(木)ー10月18日(日)
11:30ー18:30(最終日11:30ー17:00)
10月14日はお休み
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