彫刻、何処でもない場所のカケラ
Sculpture , a fragment in the place that there is nowhere
「彫刻、何処でもない場所のカケラ」と題して行われる本企画では、第3回に桑名紗子を迎えて個展が開催されます。現代において芸術 とは、固有のジャンルがより拡散していく傾向にあり、絵画、彫刻といった定義はますます曖昧になっています。むしろそれらの概念は今や意味を失効し、何ものをも意味しえないともいえるかもしれません。そのような各ジャンル間の脱境界化という状況にありながらも、 本企画においてはあえて彫刻への問いかけがなされます。固有の場や意味といった、伝統的な彫刻がもちえた要素を次々と喪失し、断片 化されていった彫刻。そのような、まさしくカケラと化しながらも無名の場所において立ち現われてくるのは、彫刻という名の亡霊かもしれません。しかし、たとえそれが「彫刻のようなもの」としかいいようがなくとも、先鋭的な活動をしている作家の作品を通して考察 することは、必ずや私たちを彫刻の「源- 点」⦆へと導くことになるでしょう。
⦆ 桑名紗衣子はこれまでに、教会の窓枠の形状を模したレリーフに浮世絵の図像が描かれる「Windows08」や、自然物、既製品を梱包用の緩衝材で包み込み、それを型取ったセラミックの立体作品「Floated」などのシリーズを制作してきました。インターネットなどのメディア を通じ、既視感にみちた情報に日々さらされることで、私たちはリアリティを失調しているといえます。それは作品名が示すように、 つねに宙吊り状態のまま漂うような身体感覚として指摘できるかもしれません。 しかし、そのような希薄な現実感に対して桑名は抵抗することなく、あえて無防備であろうとしています。陶磁器の生成過程で不可避に発生する、釉薬の変化や亀裂などの形状の変質を受苦的に 受け入れることで生み出される作品は、装飾性をおびつつ鑑賞者にその存在を強く印象づけています。そのような作品とは、それがもつ荘厳さや重厚さに反比例するように、「存在論的な軽さ」を獲得しえた彫刻といえるでしょう。
現代の私たちにとって、世界のシステムがもはや認識不可能であることは疑う余地がありません。桑名にとっても、リアリティを欠いた疑似的な世界観に端を発するシミュラークルの交換は、あたかもゲームのごとく作品内で活性化されていくことになります。交換可能性が高められたキメラとしての作品にそれでもかろうじて存在する、系統樹のような不可視の関係性。作品同士がひとつの空間内に展示 されるとき、断片と化したそれらから私たちはどのような繋がりを紡ぎ出すことができるのでしょうか。
森 啓輔(本展企画者)
桑名紗衣子(くわな・さえこ) 略歴
| 1982 |
千葉県生まれ |
| 2008 |
武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業 |
| 2010 |
武蔵野美術大学修士課程美術専攻彫刻コース卒業 |
個展
| 2008 |
「SomeFloats」麻布アートサロン(東京) |
グループ展
| 2006 |
「曖昧な」居場所」武蔵野美術大学(東京) |
| 2007 |
「逸脱」 武蔵野美術大学(東京) |
| 2008 |
「やわらかな霹靂」 武蔵野美術大学内FAL(東京) |
| |
「Joy」 Pax project spac(e 北京) |
| 2009 |
「理化学研究所展示プロジェクト2009」 (神奈川) |
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「FRESH EXSPAND」 R2柏(千葉) |
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「美しい誤読」武蔵野美術大学(東京) |
| 2010 |
「トラ!トラ!トラ!」 マキイマサルファインアーツ(東京) |
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「ArtFairFree」 Vacant原宿(東京) |
森 啓輔(もり・けいすけ)
1978年 三重県生まれ
2001年 早稲田大学人間科学部卒業 出版社での営業職を経て、 2009年 武蔵野美術大学大学院芸術文化政策コース修了 現在、 武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科助手
開催情報
森 啓輔 企画 vol.3 彫刻、何処でもない場所のカケラ 桑名紗衣子 「My Phylogenetic Tree」
会期: 2010年6月17日(木)ー6月27日(日)
6月23日(水)お休み |