彫刻、何処でもない場所のカケラ
Sculpture , a fragment in the place that there is nowhere
「彫刻、何処でもない場所のカケラ」と題して行われる本企画では、第4回に箕輪亜希子を迎えて個展が開催されます。現代において芸術とは、固有のジャンルがより拡散していく傾向にあり、絵画、彫刻といった定義はますます曖昧になっています。むしろそれらの概念は今や意味を失効し、何ものをも意味しえないともいえるかもしれません。そのような各ジャンル間の脱境界化という状況にありながらも、本企画においてはあえて彫刻への問いかけがな されます。固有の場や意味といった、伝統的な彫刻がもちえた要素を次々と喪失し、断片化されていった彫刻。そのような、まさしくカケラと化しながらも無名の場所において立ち現われてくるのは、彫刻という名の亡霊かもしれません。しかし、たとえそれが「彫刻のようなもの」としかいいようがなくとも、先鋭的な活動をしている作家の作品を通して考察することは、必ずや私たちを彫刻の「源-点」へと導くことになるでしょう。
箕輪亜希子の作品にはいつも、どこか不穏な空気がつきまとっています。例えば、ポリ塩化ビニールの人形の表面を薄く削り取ったシリーズ「New fa ce」は、特定のキャラクターの形をかろうじて保持しながらも匿名性を強く感じさせますし、また個展「投げ出される形」の繰り返し壊され、その度に修復された陶製の器や人形もまた、その歪な相貌が鑑賞者を不安に陥れます。それは、住宅の間取り図をつなげたコラージュ作品《Floor plan》についても同様であり、その統合された形態とは対照的に、出口のない迷宮のような住居という点においてある異質さを帯びています。これまで箕輪は、そのように日常にあふれる物質に彫刻的な介入を施すことで作品を生み出してきました。
一方でまた、その奇妙な形象と明晰なコンセプトの背景には、彫刻という形式自体に対しての問いかけが内在していることは見逃してはならないでしょう。このことはカービングやモデリング、表面と深層といったさまざまな彫刻の概念について、制作を通じて作家自らが確認作業を行なっているといえます。 膨大な量の物質とデジタルデータが並存している現代において、箕輪はメディアを横断しそれらを撹拌することで、不可視の状態をそのまま可視化させようとします。つくることの否定を伴いながら、二律背反的に制作行為を担保しようとする箕輪の作品は、ハーマン・メルヴィルの小説に登場する筆生バートルビーが明瞭な口調で繰り返し語った「しないほうがいいのですが」という言葉がもつ「潜勢力」(アガンベン)と彫刻の制作行為との接点を、私たちに提示してくれているといえるかもしれません。
森啓輔
箕輪亜希子(みのわ・あきこ)
| 1980 |
東京都生まれ |
| 2006 |
武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業 |
| 2008 |
武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了 |
個展
グループ展
開催情報
森啓輔 企画 vol.4 彫刻、何処でもない場所のカケラ 箕輪亜希子「虫の居所 」
2011年7月7日(木)-7月17日(日) 11:30-18:30 (最終日 11:30-17:00)
(水)はお休み |